Harcology / Greg Gisbert

Eleventh Hour

Eleventh Hour

 Chris PotterのサックスにGregory Hutchinsonのドラムで買いかな、と購入。内容は正統派のハードバップ。不勉強ながらGreg Gisbertは知らなかったが、端正な魅力で聞かせる。野性味は薄いがきっちり上手いというタイプ。Art Farmerの線を太くしたようなイメージ。
 曲目はオリジナル中心ながら、「Autumn in New York」なども演奏。珍しいのはThad Jonesの「Three in One」、Sonny Stittの「The Eternal Triangle」を持ってきたところ。特に後者はバトルジャズの定番曲ということで期待して聞いたところ、ラストにふさわしい爽快な演奏。CrissCrossレーベルの中でもなかなかの良盤では。

練習日

 バンド練習の日。震災の影響でトヨタ系社員の休日が変更になったため、前回・今回と参加者は少ない。ピアノもベースもギターもおらず、ホーン奏者も輪になって練習。自分の音のまずさがまざまざとわかって、情けないやら。
 Be Happy出演で自分の音色が悪いことが気になっているので、マウスピースを昔のものに変更。リードは試行錯誤だが、昨日入手したリコーは今ひとつだった。リコーセレクトジャズの方が自分には合うようだ。

 ツィッターも書くようにしたら、ブログへの書き込みが激減してしまった。これってみんなに共通する傾向みたいで、かつて巡回していた経済系のブログも軒並み書き込みが減少している。

Be Happy Jazz Festival2011に参加

 今年も参加。愛知県社会人ビッグバンドの祭典。演奏したのは下記の三曲。

  • Take The A Train

 おなじみの曲をファンクアレンジで。ソロをとった。

  • Dear Old Stockholm

 4ビートアレンジ。アドリブ部分はDmのブルース。

  • I'm Getting Sentimental Over You

 原曲はトミー・ドーシーのバラード。今回はトロピカルなラテンアレンジ。ソリがうまく揃わなかったようだ。

 全般に消化不良。反省点が多かった。自分の問題は自己責任だが、いろいろアンサンブル面で思うところもあって難しい。

マクリーンのアルバムコンプリート収集達成!?

 街中をぶらついて、「Mal Waldron - Jackie McLean / Like Old Times」を偶然発見。即購入!もちろんLP。

 ビクターによって1976年に録音された本作品。フュージョン全盛時代の日本製作盤ということもあり、マクリーン関連でももっとも入手困難な一枚だと思う。このサイトを見た人の9割9分以上は聞いたことがないと思う。それはさておき、かれこれ10年ほどジャッキー・マクリーンの作品を収集してきて、これでマクリーンのリーダー作品はコンプリートのはずだ。めでたい。
 実は、まだ収集していない盤がある。ライブ盤を何枚か把握していて、それの入手ができていない。二枚ほどかな。誰かのリーダーアルバムとしてのライブ盤ではなくて、企画物のライブ盤なので、なかなか再販もされないのがつらい。一部の映像は持っているんだけど。
 ともあれ、一つの区切り。嬉しい休日になった。肝心の内容だが、A面はバラード集だった。B面はこれから聞く。

天井川

 仕事で滋賀県草津市へ。東海道中山道が交差する交通の要衝。駅から目的地まで、東海道の旧街道を歩く。
 途中にはJRも国道もこの川の下をくぐる、という天井川で有名な草津川がある。川の下をくぐる東海道を抜けて、堤防を登ってみるとこんな風景が広がっていた。

 あとで調べてみたところ、川は新しい水路に付け替えられて、現在はカラになっているようだ。春休みの子供の遊び場に。
まさに土木遺産というところだった。

ビッグバンドで演奏し始めてわかってきたこと

 縁あって社会人ビッグバンドで演奏し始めて数年。当初はまったくわからなかったビッグバンド界の一般的な状況がようやくおぼろげに見えてきた感じ。以下、いろいろ書いているけどあくまで自分の半径5mで理解したことによる主観なので、実際に正確な見解なのかどうかはわからない。理解に間違いも多いことだろうが、今現在はこう感じている、ということで。

■印象
 アレンジ主体の世界。作曲者が誰、よりもアレンジャーが誰、という方が重視される。アドリブソロは、少なくともアマチュアではそれほど重視されない。演奏する曲がコードなのかモードなのかというのも、あまり意識されないようだ。

 一般的に語られるジャズ史としては、50年代ハードバップ・ウェストコースト、60年代モード・新主流派、70年代フュージョンで80年代にアコースティック見直しで現代に至る、という感じだと思う。この辺はニューヨークのコンボジャズ主体の史観なんだが、社会人ビッグバンドを通して、実際にはもっといろんな流れがあるんだろうなと今さらながら気づいた。その一つがビッグバンド関連の潮流であって、60年代末期のサド・メルオーケストラが、西海岸の比較的譜面に強い白人の大学学バンに受け入れられ、これに刺激された形で様々なモダンアレンジのビッグバンドが育つ土壌が生まれた、というものだ。当たらずとも遠からず、だと思っている。

■プレイヤー層
 モダンなビッグバンドのCDを買ってメンバーを見てみると、中西部〜西海岸のバンドで白人が主体のケースが多い。先ほど書いた、西海岸の大学学バンというのが人材供給源として想像できる。ゲストミュージシャンも、ウェストコーストジャズで聞いたことあるな、というプレイヤーが多い。
 ニューヨークを拠点とするバンドは上の限りではない。例えばMingus Big bandなどはコンボプレイヤーの集まりで、アドリブも当然のように濃い。

■演奏される曲
 演奏されるのはビッグバンド専門の作編曲家のオリジナル曲のほか、スタンダードが多い。コンボジャズマンの曲もたまに演奏されるが、彼らの曲はビッグバンドとして演奏するには単純なものが多いため、たいていはアレンジが追加される。フュージョン曲のビッグバンド化も貪欲で、そこいらのハードバップ親父よりはるかに新しい響きの音楽を演奏している。

■アレンジ
 1940年代のIn The MoodやTake The A Trainの頃は、サックスがメロディ担当でトランペットとトロンボーンが合いの手担当、という大まかなアレンジ上の分担があったが、現在のものは格段に複雑になっている。木管金管ブレンドは当たり前。
 拍子もワルツは当たり前で、変拍子もよく演奏される。リズムも多彩。
 音色もぐっと豊かになっており、サックスは、アルト2本〜テナー2本〜バリトン1本を基本としつつも、フルートは基本で、ソプラノサックス、ピッコロ、クラリネットバスクラリネットを必要に応じて持ち替えて演奏するのが当然になりつつある。この辺の基本を作ったのがThad Jones - Mel Lewisのオーケストラだと理解している。

■バンドリーダー・アレンジャー
 有名どころのうち、覚えたものは下記の感じ。アレンジャーは9割が白人、というイメージ。Quincy JonesThad Jonesは例外。大編成のアレンジをするにはある程度の楽理の知識が必要なわけで、学理を学ぶには金が要る。この辺はアメリカの根強い繊細な問題が影響しているのかも。

Count Basie
 学生バンドを中心に、ビッグバンド界の基本になっている。Quincy Jones、Sammy Nesticoのアレンジが多く、ビッグバンド界では有名なアレンジ多数。特にSammy Nesticoの一部はアレンジが作り込まれており、同一曲でもバージョン違いまで含めて研究されていると聞く。
 歴史の長いバンドなので、April In ParisやOne O'Clock JumpのようなQuincyやNesticoが入る以前の古いアレンジは、アドリブまで含めて完コピする場合もある。ここまで来るともはやGlenn Miller的な再現音楽の世界に入っていると思う。

Thad Jones - Mel Lewis 〜 Vanguard Jazz Orchestra
 略称サド・メル。信奉者が多い。60年代末期から70年代にかけて活躍。Thad Jonesによるモダンかつブルージーなアレンジが基本になっている。アドリブも強力でバランス良く感じる。Thad JonesとMel Lewisが亡くなってからはVanguard Jazz Orchestraがこのバンドの流れを汲んでいると聞く。Vanguard Jazz Orchestraの近年のアレンジャーの一人Jim McNeelyは個人的にお気に入り。

・Maynard Ferguson
 トランペット中心に信者多く、一般ウケも抜群。「ロッキーのテーマ」「スター・トレックのテーマ」あたりが一般的には有名か。これらの有名曲については、ジャズ風ポップスとして聞き手を拡大した功績があると思う。

Maria Schneider
 Gil Evans晩年の弟子と言われた女性アレンジャー。木管楽器の多用、アコーディオンや女性によるヴォイス、エキゾチックなモードスケールが、水彩画のようなハーモニーで構成される。物語的で、交響詩のジャズ版といった趣き。その分ブルース臭さは希薄。

・Mingus Bid Band
 故Charles Mingusの曲を演奏するビッグバンド。アレンジもラフでアドリブ主体。コンボ聞いている人には、Migus Bandそのままなので受け入れられやすいと思う。

・Gordon Goodwin
 最近はやってきた人。映画音楽のアレンジャーをやっていた人のようで、ハリウッド映画のサントラと聞き間違うばかりのエンターテイメント性の高いアレンジが特徴。カッチリお約束で作り込まれ、一歩間違うと下品になる直前で良質なサウンドに仕上げている。

・その他の著名なアレンジャー
 Bob Brookmayer、Frank Mantooth、Rob McConnell、Jim Martin、Bill Holmanなどがよく聞くところ。これに、サルサなどのラテン系や北欧のアレンジャーが彩りを添えているイメージだ。

 一方で、コンボで名前が知られているDuke EllingtonやGil Evansのオリジナルアレンジはほとんど演奏されない。Dukeの曲そのものはたくさんされているけど。アレンジがあまりに独自過ぎて、譜面化できないからだと思う。
 秋吉敏子さんは、純粋に「難しい!」というイメージ。で、実際に譜面をみたらそのとおりだった。

■取りあえずわかったこと
 知った風なことを書いてきたが、コンボばかり聞いている人から見ると、西海岸の白人ミュージシャン主体に独自の進化をしてきたジャズであり、ジャズという音楽言語は同じながら文化が違うというところが面白い、というのが目下の感想だ。アレンジそのものの技法は相当高度なところまで来ていると思うので、かつてのMiles DavisとGil Evansのようなコラボレートがもっとできればいいのにな、と思う。