伊勢湾台風

 伊勢湾台風は昭和34年9月26日に和歌山県潮岬に上陸し、未曽有の被害をもたらした。三重県・愛知県の人間にとっては幼少のころから大災害の代名詞となっている台風だ。
 僕の親父は高校生のころ、この台風に遭遇している。当時親父は、三重県津市の高校に進学しており、下宿暮らしだった。実家は三重県の東紀州。用事のない週末は、津の下宿から実家に汽車で帰省していたようだ。その日は土曜日で、親父は津の下宿から東紀州の実家に戻っていた。
 台風接近のその晩、小学校の校長だった祖父に指示されて、親父は祖父の代わりに風雨の強まる中で小学校の宿直に向かったという。親父はその小学校の校舎で、伊勢湾台風に遭遇した。
 あとの顛末はあっけない。台風接近のラジオを聞いてそれなりに警戒はしていたそうだが、校舎の瓦は飛び、窓が割れて豪雨が宿直室内に降り注ぐに至り、どうしようもなくなって消防を呼んだとのこと。台風で消防を呼ぶという行動がなかなか想像しにくいが、おそらく校舎のどこかが実際に破壊されたんだろう。

 伊勢湾台風は4,700人近い犠牲者を出した。折しも台風が近づいている。