Sonny Side Up / Dizzy Gillespie

Sonny Side Up

Sonny Side Up

 Verveレーベルのアルバムは有名ジャズマン同士の共演ものという企画盤が多く、その多くは名盤となっている。企画として安直だとは思うけど、やはり充実した時期のジャズマン達の共演というのはそれだけで面白いものになっているのだ。
 本アルバムもそうした共演企画盤の一つ。ビバップのカリスマDizzy Gillespieと、ハードバップのスターであるSonny Rollins、さらにSonny Stittもテナーで共演というもの。おそらく唯一のDizzyとRollinsの共演というだけでなく、二人のSonnyのバトルという要素も重なり、本アルバムは極めて面白い内容になっている。
 一曲目は古いスタンダードの。最後のDizzyの歌はご愛敬だが、それをさしおいてもリラックスした良演奏となっている。目立たないが巧みなアレンジも聞き物。
 二曲目は、サビのコードは<I Got Rhythm>とは少し違うものの、循環ものである。ここではRollinsとStittのバトルが最大の聞き物。最初はRollins、次いでStittの順。二人とも数コーラスずつ演奏し、その後バトルに入る構成。ちなみに、豪快な音色とフレーズがRollinsで、輪郭のかっちりした音色でビバップに忠実なフレーズを吹くのがStitt。音量がよく変わるので、あれ、演奏者が入れ替わったのかな?と思うときがあるけど、実際は始まってしばらくはRollinsの演奏、その後にStittの演奏。二人のバトルは6分半くらいから始まる。先発がRollins、後発がStitt。これは聴いてわかるとおり、豪快なフレーズとリズムで押しまくるRollinsがねじ伏せて勝ちというところだが、Stittが劣っているわけではなくて、個性の違いというところ。そしてバトルの後に現れるDizzyの演奏も素晴らしい。正に名演奏と称えるにふさわしいトラックだと思う。
 三曲目はブルースの。R&Bほどではないけど、モダンジャズの中では比較的こってりしたブルースサウンド。何か新しいことをどうの、というわけではなく、ひたすらリラックスした、それでいて質の高いフレーズが紡がれる。歌心の時代の良きジャズという演奏だ。後半のSonny Stittは、中でも特にいい演奏を聴かせてくれる。
 四曲目の<I Know That You Know>は比較的マイナーなスタンダード。ここはSonny Rollinsが圧倒的。急速調の中でブレイクの入った中を大胆に確実にアドリブ。その後のDizzyも正に目の覚めるようなアドリブだし、三番手のStittのアドリブもRollinsにひけをとらないいいものなんだが、アレンジの妙でRollinsに軍配が上がった格好。

 個人的な想い出では、これは18歳のときに初めて聴いたモダンジャズの一つ。完全にノックアウトされた。僕はモダンジャズを聴き始めた当初は、Charlie ParkerのSavoyレーベルやDialレーベルのアルバムばかりを聴いていて、その後にこのアルバムを聴いて衝撃を受けたわけだ。ビバップの衝撃も感じつつ、モダンジャズの洗練、特にモダンジャズにおけるアレンジを初めて意識した一枚でもある。未聴の方はぜひ、とお奨めの名盤。