岡田靖さん死去

岡田靖・内閣府経済社会総合研究所主任研究官が死去

 経済学者の岡田靖さんが亡くなりました。

 僕は岡田さんとは一切面識がありません。僕が岡田さんの名前を知ったのは、平成15年に国土交通省国土技術政策総合研究所で一年間の出向をしていたときのことです。公共事業が経済に与える効果を勉強していたとき、そもそも経済学を勉強する必要があって様々な書物やウェブサイトを見ていたときに、偶然そのお名前を知ることになりました。
 当時、岡田さんはクレディスイスファーストボストン証券の経済調査部長で、日本経済ウィークリーというレポートを連載し、ウェブ上で閲覧することができました。それは日本のマクロ経済の動きに関するレポートで、日本がなぜ失われた10年(最近は20年とも)と呼ばれる大不況に陥ったのかがわかりやすく的確に分析されていました。そのレポートはあまりにも鋭く面白くて、一時は自分の研究もそっちのけで読みあさりました。自分の政治経済観、政党の経済政策のスタンスは、そのときの理解が大いに影響しています。

 近年に至るまでも、日本が陥った不況の原因はデフレにあり、デフレにいたった政策の誤りは日本銀行の引き締め傾向の金融政策にある、それを克服するには弱いインフレの状態に日本経済を戻さないといけない、具体的には日銀法を改正し、デフレ期にはインフレに戻るまで強力に緩和的な金融政策を続けさせる、政府はその間は財政政策も否定するべきではない、といういわゆるリフレーション政策をぶれることなく主張されていました。
 ちまたにはびこる「中国の経済が伸びたから日本が悪くなった」「デフレはモノの値段が下がるから悪いことばかりでもない」「日本の経済構造は硬直化しているので構造改革で新しい成長産業を見つけないといけない」「経済的に危ない時期なので、政府は支出をもっとおさえて今こそ財政赤字を減らすべきだ」といった説について、明快に間違いだ、と確信できるようになったのは氏のおかげです。
 市井のサラリーマンとして、謹んでご冥福をお祈りいたします。