Round Midnightを見る

ラウンド・ミッドナイト [DVD]

ラウンド・ミッドナイト [DVD]

 録画してあった映画「Round Midnight」を見る。50年代後半のパリを舞台に、アルコールで身を崩した有名ジャズマンの姿と、彼のファンである青年との友情を描いた映画。Dexter Gordon主演。本物のジャズマンが役者として演じ、公開当時評判になった映画だ。内容としては、よく知られるとおりパリ移住後のBud Powellをモデルに、アメリカからフランスに渡ったジャズマンと彼を取り巻く人々の姿を描いている。酒に逃げては体をこわし、病院に担ぎ込まれる。そんな中のヨレヨレの演奏の中に光る音楽。ようやく健康を取り戻した後、ニューヨークに戻ってからの娘との再会と悲しみ。演技なのか素なのかわからないDexter Gordonの姿が印象的。時折見せる少年のような笑顔が、逆に彼の過ごしてきた人生のつらさを語っているように見える。
 音楽的には、Herbie HancockWayne Shorter、Billy Higgins、Bobby Hurcherson、Tony WilliamsJohn McLaughlinFreddie Hubbardなどそうそうたるジャズマンが役者として演じつつ、演奏している。サントラも出ており、一級品のジャズ・オムニバスアルバムとなっている。Wayne ShorterDexter Gordonのバトルなんて、このサントラでしか聞けない。
素晴らしい演奏がたくさんあるが、中でも映画タイトルにもなっている'Round Midnightを歌うBobby McFerrinの素晴らしさと、挿入歌であるHerbie Hancockの「Chan's Song」ははずせない。特に後者は叙情的なラテンバラードで素晴らしい。
 50年代当時のBud Powellの姿、それをモデルにした映画のストーリー、映画が製作された80年代後半のジャズマン達の演技や演奏姿。多面的な見方ができる映画。

サントラ。
[rakuten:vandar:10047460:detail]

劇中で何度か演奏される「Society Red」の初演が含まれるアルバム「Doin' Allright / Dexter Gordon

Doin Allright

Doin Allright

My Fair Ladyを見る

マイ・フェア・レディ [Blu-ray]

マイ・フェア・レディ [Blu-ray]

 BSに録画してあったMy Fair Ladyをみる。オードリー・ヘプバーンの代表作の一つ。
 とても有名な映画だが、3時間の大作ということもあり、恥ずかしながら初見だった。今回見るまでは、Pretty Womanの元ネタのロマンチックコメディくらいにしか思っていなかったが、それだけではない要素があって、さすがの名作だった。
 もちろん、ロマンチックコメディ要素はメインとなっている。初めは言語学者の教授と、訛りを治したい花売り娘だった二人が徐々に惹かれあっていくのは正に王道。そして上流社会の衣装を身にまとって変身した後のヘプバーンはびっくりするくらい美しかった。
 しかしそれだけではなかったわけで、戦前のロンドンを舞台にした、階級社会をテーマにした社会的な要素をもった映画だった。タイトルのMy FairがなまってMayfairに聞こえることとのひっかけになっているのは有名な話だが、初めはこっけいに訛りを直しているように見せて、実はイギリス社会に深く根付いた階級社会と、言葉によって人の態度が変わる社会のあり方を揶揄しており、それがこの作品を奥深いものにしている。

 音楽としては、「踊り明かそう(I Could Have Danced All Night)」が有名だが、I'm Grown Accustomed to Her Faceもこのミュージカルが由来だとは知らなかった。知っている曲を思いがけない映画で発見するのは楽しいものだ。

 ジャズでは、Shelly Manneのトリオ作品が名盤として知られている。

マイ・フェア・レディ

マイ・フェア・レディ

Full Range / Eric Alexander

Full Range

Full Range

  • アーティスト: Eric Alexander Sextet,Eric Alexander,John Swana,Peter Bernstein,Kenny Barron,Peter Washington,Carl Allen
  • 出版社/メーカー: Criss Cross
  • 発売日: 2008/12/03
  • メディア: CD
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 Eric AlexanderのCrissCross時代の94年の作品。しっかりと組み立てられたフレーズでハードかつ端正に吹き、決してはずさないのはご存じのとおり。
 メンバーが良くて、Kenny Barronのピアノ、Peter Bernsteinのギター、Carl AllenのドラムにPeter Washingtonのベース。トランペットのJohn Swanaは当時の新人かな。安定感抜群で、きっとカッコいいハードバップだろうと思ったらその通りだった、というアルバム。
 Coltrane Changeを駆使した一曲目のTo The Chief、イントロの熱情的なルバートから徐々にハードな演奏に入る二曲目のThe Link。これはKenny Barronも素晴らしい。複雑かつド高速アレンジが光るスタンダードの五曲目People Will Say We're In Love、ラストの逆循環が痛快なA Beautiful Friendshipなど、いずれも水準以上の好演奏ばかり。

Be Happy Jazz Festival 2012に参加

 毎年恒例の愛知県社会人ビッグバンドの祭典、Be Happy Jazz Festivalに参加してきた。
参加バンド15バンド、総勢300人以上によるアマチュアジャズフェス。なので時間も長く、朝10:30から夕方18:30まで、8時間の長丁場になっている。
 例年、出番にかかわらず朝から参加してきたんだが、今年は、仕事が急遽入り、途中からの参加となった。

 今回演奏したのは下記の3曲。

  • No Nonsense

 John Fedchockによる半モードの曲。8小節+8小節がモード、4小節のブリッジのあと8小節のラテンというコーラス。「アレンジャーが途中で投げ出してる」とはK氏の弁。確かに唐突に終わる。この曲だけは原曲をCDで見つけたので紹介。

NO NONSENSE

NO NONSENSE

  • Hop,Skip and a Jump

 タイトルの雰囲気とは違ってバラード。アルトとトロンボーンがフューチュアされる。ダイナミクスがとても難しい曲なんだが、最初に演奏し始めて一年。ようやく演奏できるようになった感じ。

  • On Green Dolphin Street

 バリトンサックスをフューチュアしたスタンダード。前半は通常のEbだが、後半はCになるという一風変わったアレンジ。アレンジはAlan Baylock。いいアレンジだったと思う。この人のアルバムを先日偶然購入したが、非常に良かった。

 この他に、ゲストのバリトンサックスの宮本大路さんが来ることを踏まえたバリトンサックス陣によるバリトンサックスだけがフロントのビッグバンドとか、面白い試みもなされていた。
 宮本大路さんは生で聴いたのは初めてだが、堅実なフレーズに抜群のテクニック、そしてエンターテイメント。素晴らしいプレイヤーだった。
 このほか、サプライズゲストでエリック宮城さん。こちらもあのハイノートに酔う。音圧が圧倒的だった。

Quintessence / Quincy Jones

Quintessence (Reis) (Rstr) (Dig)

Quintessence (Reis) (Rstr) (Dig)

 Quincy Jonesがキャリアの初期に残したジャズアルバム。
 タイトル曲「Quintessence」は美しいバラード。Phil Woodsのアルトがひたすらに美しい。
 「Robot Portrait」は彼らしいゴージャスなビッグバンドサウンド。Call & Responseが徹底されていてニヤリの曲。
 「Little Karen」はタイトルどおりのチャーミングな曲。ダイナミクスの妙。これも王道のサウンドだ。
 「Straight,No Chaser」はThelonious MonkのFブルース。こういうブルースをビッグバンドでやるとソロ回し合戦になりがちだが、ここはみっちりとアレンジしている。この辺は好みの分かれるところだろうなあ。
 「Hard Sock Dance」もブルース。こちらはいかにもビッグバンドらしい聴きやすく粋なメロディ。同じブルースでもStraight No Chaserとのメロディの違いが際だっていて面白い。
 「Invitation」はラテン風味。ジャングルサウンドとでもいおうか、パーカッションが効いている。ソロはPhil Woodsの独壇場。いい仕事をしている。
 余談だが「Quintessence」とは「真髄」とかそういうたぐいの意味らしい。もちろんQuincy+Essenceのダジャレも兼ねてのタイトルだろう。

Rob Parton's Jazztech Big Band Featuring Conte Candli

 Rob PartonのJazztech Big Bandが名手Conte Candliを招いて製作したアルバム。
 一曲目の「Blues For Mr.P」は軽快なブルース。Mr.PとはPartonのことか。安定感抜群の王道サウンド
 Conte Candliの端正な演奏は、美しいワルツ「Dreamers of Dreams」で存分に披露される。ここではフリューゲルホルンを演奏。
 ラストの「Evanology」はビッグバンドとしての華やかさ、楽しさを存分に表現した一曲。爽快なメロディと軽快なテンポ、複雑なリズムで盛り上がる。Confirmationの進行を使ったブルース。
 ずっとCDを探していたのだがなかなか手頃な値段のものが見つからず、今回はダウンロード販売で入手。あまり経験はない購入方法だったが、今後は一般的になるんだろう。

Rob Parton's Jazztech Big Band

Rob Parton's Jazztech Big Band

Dexter Calling / Dexter Gordon

Dexter Calling

Dexter Calling

 Dexterの演奏が良いのはもちろんだが、彼のオリジナル曲が非常にゴキゲンなのはあまり知られていないのではないだろうか。アルバム「Go」のCheese Cakeこそ有名だが、それ以外のDexterのオリジナルで思いつく曲ってあまりないと思う。ここでは3曲目の「I Want More」、6曲目の「Ernie's Tune」などがなかなかの良曲。もちろん演奏も。
 あと聞きものはCharles Chaplinの「Smile」。ミディアムで演奏されることが多いが、ここではファーストで演奏されていてスリリング。
 Dexter Gordon 1961年の作品。Kenny Drew , Paul Chambers , Philly Joe Jonesを従えてワンホーンで、ときに朗々と、ときに豪快に吹く、良盤。