中部ローカル線小さな旅

 中部地方にはJR飯田線というローカル線があって、前から少し興味があった。どんな車窓なんだろう?

 一念発起し、朝から出発。早朝のJR金山駅から豊橋駅へ。豊橋駅からJR飯田線を縦貫する特急「ワイドビュー伊那路」で飯田まで向かってみる。こういう無駄な旅っていいよね。
 果たしてワイドビュー伊那路は、とてものろい特急だった。山中を走るのでとても線形が悪く、勾配もきついので速度が出せないのだ。豊橋から豊川稲荷を経由して、長篠の合戦で有名な長篠を抜ける。佐久間ダムから険しく昼なお暗い山間部に入り、無数のトンネルを抜けていく。途中、車窓には佐久間ダムの湖畔、そして天竜川の流れが広がる。車窓にはたくさんの発電所が見えた。飯田線は電力開発のための路線が旅客化した路線なんだな。道理で、ローカル線の割に電化されているわけだ。それにしてもなるほど、こういう車窓だったのか。
 電車はゆっくりと進む。山はどんどん深くなっていく。途中までは車窓の彼方に道路も見えたのだが、やがて道路も見えなくなり、文明を感じるのはこの線路のみ。外は完全な大自然だ。本当の秘境を走っている感じ。ふと、「ここで一人になったら命が危ないよな」などとよからぬ連想までしてしまう。そういえば昔、北海道の秘境を旅したときもこんな考えが脳裏をよぎったっけ。まさか中部地方で、自宅から数時間でこんな感情を抱く場所にいけるとは思ってもいなかった。
 やがて険しい山中を抜け、天竜峡にいたる。渓谷美をしばし味わい、飯田市内へ。伊那谷だ。天竜川に沿った河岸段丘に市街地が広がる、特徴的な街並み。ここは仕事でよく来るところ。ここでお昼。名古屋を出て、3時間半の旅だった。それにしても暑い。。。軽く街中をぶらつく。帰りは高速バスで中央自動車道から名古屋に戻る。こちらは2時間の旅。うーん、ちょっと複雑。