ペイパーブリッジコンテスト

 某発注者が開催する「ペイパーブリッジコンテスト」に支社をあげて参加することになり、数日来若手社員がオリジナルのペイパーブリッジを作成していた。これはA1版くらいの方眼紙と木工用ボンドのみで、重りに耐えられるような橋をつくるというもの。繁忙期も終わり、こういうことをやる余裕が出てきたわけだ。まあ発注者へのおつきあいの意味もあるんだけど。
 土木屋として、やるからには強い橋をということで、社内で希望者を募り、いくつかの橋を造って、一番強い橋でエントリーしよう、ということになった。(ちなみに僕は参加していない)

 で、本日はその社内予選の日。実際にペイパーブリッジに重りを載せることになった。重りの載せ方だが、まず丸い棒を橋桁に交差するように置き、その棒の両端に付けられた紐の下にブランコのように重りを載せる台をぶら下げる。そしてそのぶら下げられた台の上に重りを載せていく。徐々に重くしていって、もっとも重い過重に耐えられた橋の勝ち、というわけだ。

 エントリーされたのは8橋ほど。うち、4橋が箱桁といわれる構造だった。いわゆるティッシュの箱のような構造。今回は、内部に紙を立てに丸めてボンドで貼り付けるなど、各人趣向をこらしたつっかえ棒が入っている。
 2橋は板桁といわれる構造。単純に言うと、板を貼り合わせて橋を造るというもので、今回は方眼紙を何枚か貼り合わせ、厚みのある板を組み合わせ・貼り合わせして橋梁を造っている。この二種類の橋は、橋桁に厚みがあるのが特徴。この厚みで過重に耐えるわけね。
 もう1橋はトラスの下路橋といわれる構造。よく鉄道の橋などで、三角形の組み合わせで川を渡っている橋があるけど、ああいう橋の単純なやつ。今回エントリーされたのは、真横から見たら _/\_ こんな感じの橋。斜めの柱からは、鉛直方向に補助の柱が着いている。この橋の桁の高さは、板桁や箱桁よりも薄いのが特徴。
 最後の1橋は、橋というよりも過重に耐えることだけを目的に作られた道具のようなもの。具体的には、薄い板の下に、たるませた紙を貼ったものになっている。アルファベット「D」の丸い部分を下にした形を想像してもらって、平らな部分がやや薄い板で、丸い部分がたるませた紙、という構造だ。板とたわんだ紙の間の部分に、最初に話が出た重りをぶら下げるための丸い棒をわたすわけ。ほかの橋は、すべて丸い棒は橋桁の上に置く構造となっている。

 やや説明がわかりづらかったと思うが、結果としては、「トラス下部橋」と「横向きD」の勝ちだった。最初に説明した箱桁・板桁は、見た目は桁高が厚くて丈夫そうに見えたけど、いずれも過重に耐えられず、破壊。箱桁は圧縮破壊。ティッシュの箱が、上からぐしゃっとつぶされた状態を想像してください。ああいう感じで壊れた。板桁は引っ張り破壊。空手の板割りみたいな感じで、パキっと壊れた。細かい構造にもよるけど、どちらもだいたい40〜60kgくらい。
 それよりずっと薄い橋桁のトラス下部橋と横向きDは、結果として80kgくらいまで耐えた。トラス下部橋は、最終的には斜め部材から鉛直に伸びていた補助の柱が切れて、斜めの柱が途中からぐにゃっと曲がってアウト。これに伴い、橋桁そのものもぐにゃり。最初は三角形だったけど、最終的には桁が折れて菱形になっていた。
 横向きDは、たわませた紙の部分がぶちっと切れてアウト。これは、さいごまで橋桁そのものは壊れなかった。

 この結果に我々も少々驚き。実験前は、木工用ボンドが過重に耐えられず、その部分から破壊に至るんじゃないかという見方から、構造として単純な箱桁・板桁が有利かな、という予測だったが、結果としてはなるほどー、と感心することしきり。木工用ボンドって強いんだなあ。
 ちなみに、そもそも構造力学を知らないバイトさん、派遣さんたちは、もっとも薄い二橋が最終的に残ったことが不思議でならなかった様子。「なんでー?」を連発していた。確かに、力学を知らないとそう思うかも。

 要するに橋桁が薄かった橋は、一見華奢に見えるけど、実際は過重が分散され、構造物全体で過重を支える構造になっていた。だから強かった。これに対して、橋桁や板桁は、桁の厚さだけで過重を支える構造になっており、一点に圧力が集中する構造になっていた。だから最終的には過重に耐えられずに壊れた、というわけだ。

 結局、上位三位までが発注者の主催するコンテストにエントリーすることに。最終的にすべての橋を壊してしまったわけで、三人はもう一回業務の合間を縫ってペイパーブリッジを作ることになったのだった。いやあ、面白かった。