映画「富士山頂」のTV放映を見る

 寡聞にして知らなかった映画「富士山頂」のTV放映を見る。石原裕次郎主演の映画の一つで、富士山頂にかつてあったレーダードーム観測所の建設工事を描いた物語。宇野重吉勝新太郎市原悦子田中邦衛、渡哲也らが出演。みんな若い!裕次郎三菱電機の社員役。後半の工事の様子はもちろんのこと、物語前半の受注の様子までかなりリアルだな、と思っていたが(そんな場面を映画にするのもすごいが)、原作の新田次郎気象庁の役人だったそうでなるほど、と感じる。土木史にも残る高度成長期の一大工事の一つなんだが、そういう観点からもかなり面白かった。

 映像はカラー。実際の富士山での映像が空撮も交えて随所で多用され、とても美しい。この映画のためにわざわざ富士山頂にもう一つのレーダードームの観測所を建てたのか?と錯覚するくらい、よくできている。本当、どうやって撮ったんだろう。

 時代は昭和38年。僕の生まれる少し前。おそらく僕の親父が社会人になって数年経った頃の作品だろう。明日への希望に輝いていた高度成長期の気分が感じられる素晴らしい作品だった。
 それにしても半ば物語で半ばドキュメンタリーのような作品。おそらくあの「黒部の太陽」もこんな作品なんだろうと想像する。「黒部の太陽」や「太平洋ひとりぼっち」などの石原プロの映画は、裕次郎の遺言によって映画館の上映でしか楽しめないのだそうだが、今回は特別にTVでの放映だった。一説には、遺言に本作品を入れ忘れていた、との証言もあるとのこと。これはこれで面白いエピソードだな。